Arne Jacobsen 3107 プロジェクト
Arne Jacobsen 3107 プロジェクト
Designer : Arne Jacobsen
Fritz Hansen
『工芸品の魅力をもつプロダクト』
1955年にデザインされたセブンチェア。3107の品番で呼ばれています。アントチェアから始まりエイトチェアまで長年にわたりFritz Hansenの定番アイテムです。
もちろんヴィンテージのセブンチェア 3107も存在します。現行品にはない素材を使っていたり、プライウッドが少し薄かったり、脚を接合している部分を隠すカバーが鉄であったり、とスタイルは同じですが仕様は少し違います。
3107シリーズの中でも最高峰は革で張りぐるみになったバージョンは今も昔も変わりません。
革張りのセブンチェアはシンプルなデザインの椅子に込められた職人魂が感じられるプロダクトです。この形状に革を裁断し張ることは技術的に高いレヴェルが要求されます。Egg chair や Swan chairにおいてはそれ以上の技術が必要とされます。
3107に革を張るには前面、背面と2枚の革が必要です。その革の縫い合わせが発売された当時は手縫いで施されていました。どれだけ大変な作業かを私は職人さんから何度も聞いています。Egg もSwanも同じように2枚の革を使い、縫い合わせは手縫いでした。手慣れた職人でもセブンチェアを手縫いで仕上げる作業は1日以上の時間が掛かるそうです。そして身体への負担もとても大きいです。何故大変かというと革を伸ばしながら引っ張った状態で縫い合わせて行くからです。手首にかかる負担がとんでもないと聞きました。
以上のような大変さもあってから1960年代からはモールディングのはめ込み式で縫い合わせが施されるようになります。写真の最後に現行品の後ろ姿の写真を載せます。モールディングが確認できると思います。モールディングは縫い合わせの際にはめ込むだけなので、そこまで負担もありません。
ヴィンテージの3107を長年扱ってきた私からするとモールディングの革張りのセブンチェアから魅力を感じません。ただの量産品にしか見えないのです。もちろん企業努力もあり、製品としての質の向上や均一化などメリットのが多いでしょう。しかし、オールドファンとしてはやはり職人技光る手縫いに魅力を感じてしまします。
実は今回、100脚近くユーズドのセブンチェアを手に入れました。そのまま販売してもただの中古屋さんになってしまいます。そこで私はこの良質なベースに昔ながらの手縫いの製法で革を張って販売することにしました。
まずは職人探しから始めました。
15年ほど前に目黒でお店をやっていた頃、手縫いのセブンチェアを製作してもらっていた職人さんは既に引退されています。そこで長年の友人であるスワンキーシステムズの坂本さんに相談をして手縫いでセブンチェアを張れる職人さんを紹介して頂きました。
使う革も相談に乗って頂き、上質な革を入手することができました。クロムなめし加工が施され、染料で仕上げたアニリン革を手に入れることできました。この革は牛革本来の風合いである、シミや傷を残しています。
そしてもう一つの拘りが、スマートにスリムなスタイルです。革が張られたセブンチェアはどうしてもプックリとした印象です。それを中にいれるクッションを調整して美しいスタイルで仕上げました。
この椅子に込められた思い、魅力は私のヴィンテージ家具人生が詰まっているような椅子です。シンプルながらに贅沢な椅子。羊の皮を被った狼のような椅子です。
ベースが中古品につき脚にサビがあります。サビはできる限り除去しますが、取りきれない場合があります。
脚を取り付けるカバーのプラスチックは黄ばみなどがあります。脚先のグライズは良好です。
写真 Simon Narita